『第72話』 地域ぐるみでの薬物乱用防止を

いつの時代も若者は好奇心があり、現実からかけ離れた世界を体験したがる。そんな軽い気持ちであっても、薬物やシンナーで一時の快楽を求めることは、二度と社会生活に戻れない危険性をはらんでいる。

1960年代にはLSDがミュージシャンやアーチストの間で流行した。LSDはもともと精神分裂状態をつくりだす薬で、精神病の研究に使用されていた。当時若者は幻覚作用のある薬をギリシャ語で「精神の顕在」を意味するサイケデリックと呼び、乱用者が死亡して社会問題に発展した。

最近日本では、コカインや大麻の代わりに合法的に入手できる薬を使った遊びが問題になった。この薬物の主成分はデキストロメトルファンで、脳の咳(せき)中枢を抑える作用がある。化学構造は麻薬のコデインに似ており、飲みすぎるとろれつが回らなくなり、物忘れがひどくなる。

このごろ話題に上っているのがハルシオンという睡眠薬だが、現在では麻薬及び向精神薬取締法によって乱用が防止されている。

睡眠薬は医師の管理のもとに使用しないと次第に体が薬に慣れていき、致死量に達するほど飲まなければその効果が出なくなる。より強い効果を得るためアルコールとともに飲み、こん睡に陥ったり死亡するケースも発生している。

麻薬、覚せい剤、シンナーは使用者を廃人にするばかりでなく、他人を傷つけることにもなり、地域ぐるみでの積極的な乱用防止対策が必要だ