『第73話』 量と時間を守り血中濃度を維持

薬は服用する量と時間を指示通り守らなければいけない。薬物が吸収され、血液中の薬物濃度が疾病に対して有効に働く濃度を維持するために必要だからだ。 

薬は多く使えば副作用が発現しやすくなるし、少な過ぎれば十分な効果が期待できない。また、薬の中には中毒になってしまう量と効果が期待できない量が非常に接近しているものがある。この微妙な有効域を管理する方法が、薬物血中濃度の測定だ。この測定結果から複雑な計算をし、薬物の投与設計を行う。 

ぜん息に用いるテオフィリンは喫煙者でその排せつされる速度が速いなど、患者の生活習慣や体質で血中濃度が大きく異なることが知られている。抗てんかん薬では通常考えられている血液濃度よりはるかに少ない量で効果を表すことがある一方で、中毒域でも効果が得られない場合もあり、特に後者では薬物の選択が問題となる。 

投与設計ではこうしたさまざまな環境を考慮して、投与量と投与間隔が患者ごとに決定される。 

中毒や副作用が病気の症状と似ている薬物治療や、有効域まで速やかに薬物血中濃度を上げ治療効果を発揮させる急速飽和療法といった形で利用されている。