『第74話』 病原菌に直接作用する抗生物質

『第74話』病原菌に直接作用する抗生物質(百薬一話1992.11.1)

最も役に立っている薬の一つに抗生物質がある。風邪をはじめ、感染症を起こす病原菌に対して直接作用するため、よく効く。

抗生物質といえば、青かびから作られたペニシリンが有名だが、現在使用されている抗生物質もやはり、土の中にいるさまざまな微生物から作り出されたものだ。

抗生物質はその化学的構造からいくつかの系統に分けられ、作用も異なる。ペニシリン系やセフェム系は、細菌の持つ細胞壁に作用する。細胞壁は植物の細胞に見られる特徴的な構造で、この部分を作らせないように働いて細菌を死滅させる。人間は動物であるためこの細胞壁を持たず、薬剤は細菌だけに直接作用する。

マクロライド系やテトラサイクリン系は、細菌のタンパク質を合成させないように働く。ほかに、遺伝子に作用して殺菌効果を示すものなどがあり、抗生物質は慎重に選んで使用することが必要だ。

また、抗生物質は血液中で一定以上の濃度が保たれていないと効果が出ない。そのため「6時間ごとに服用」といった指示がでる。しかし、それが無理な場合は、食後と寝る前の1日4回でもよく、飲み忘れていたらすぐ飲んで、それから6時間ごとの服用でもよい。

細菌の増殖が抑えられると症状は軽くなるが、完全に菌が死滅するまではさらに数日かかる。治ったと思っても、処方された日数分はきっちり飲んでほしい。抗生物質を飲んで湿疹(しっしん)などの副作用が現れたら、何系の抗生物質であったか覚えておき、医師に告げることも必要だ