『第88話』 防水スプレーで相次ぐ中毒事故

昨年12月から今年1月中旬までに、防水スプレーによる中毒事故が全国で18件発生し、40人が被害に遭ったと報告されている。スキーウエアに防水目的で使用した際の事故が多く、密閉された室内や自動車内での使用では入院した例もある。

中毒症状はいずれもせき、呼吸困難、おう吐などだ。ひどい場合は低酸素血症や意識喪失も起こしている。

報告では、スプレーを1、2分以内に1本の半分以上使用した場合に症状が表れ始めている。短時間に大量使用した例では、5分程度で4本使ったケースがある。

スプレーには有機溶剤のノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、トリクロロエタンなどが使用されている。これに、防水効果のある成分が混ぜられている。

ノルマルヘキサンを使用して8時間の作業をする場合、空気中の許容濃度は40ppmとされている(日本産業衛生学会)。狭い密閉された空間で霧状に噴霧するスプレーの場合、これをはるかに超える数千ppm以上になる。事故はこうした高濃度の混合有機溶剤を空気と一緒に直接吸引し、防水効果を現す成分などとの相乗作用によって中毒症状を表したものと考えられる。

有機溶剤は皮膚や粘膜に刺激を与えるばかりでなく、皮膚自体も有機溶剤を吸収しやすい。着たままで吹きつけ合うと、大量に吸引し易い状態となるので絶対に避ける。狭い部屋や車の中での使用は火災の原因にもなる。霧状になった有機溶剤や成分を直接吸引することを避けるため、マスクを着用し、換気を十分しながらウエアの部分ごとに少しずつ使用してもらいたい