『第92話』 DDS(薬物送達システム)を駆使し薬の副作用防ぐ

薬は主作用と副作用が表裏一体でした。今では副作用を抑え、主作用だけを効果的に発揮する薬が開発され、実用化もされている。

薬が体内に入ると血液などの体液で薄められ、体の至る所に行き渡る。そのため、治療を必要とする臓器に有効な量を到達させるには、数百倍から数千倍もの量を体内に送り込まなくてはならない。その結果、余分に入った薬は体内の正常な臓器にも作用し、それが副作用となって現れることがある。

そこで、薬に目的地だけに到達するよう選択性を持たせ、正常な臓器に作用しない工夫が研究、実用化されている。こうすることで、薬ははるかに少ない量で有効に働き、副作用も激減される。

このように薬をねらった場所へ効率よく送り込むことを薬物送達システム(ドラッグ・デリバリー・システム、略してDDS)と呼んでいる。

DDSは抗がん剤や動脈硬化剤などに生かされ、「ターゲット療法」として使用されている。

また体内には異物を防御するためのさまざまな膜や関門があって、薬本来の形(構造式)ではそれらを通れないことがある。そのため、いったん膜や関門を通過できるような形にして体内に入れ、目的地に到達すると薬本来の形に戻るようにデザインされている薬もある。

抗がん剤や抗ウイルス剤をはじめ毒性の強い薬は多い。体内で標的となる細胞に出合ったときだけ、薬の威力を発揮する仕掛けをした薬もできている。こうすれば静脈注射する部位や薬が代謝される肝臓でも、その毒性が副作用となることはない。

まだすべての薬がこうなっているわけではないが、未来の薬はDDSを駆使したものが主流になるだろう