『第94話』 精製水でも細菌による汚染注意

医薬品を製造するのに、なくてはならないのが水。その水も、医薬品として日本薬局方に名を連ねている。収載されている水には常水、精製水、滅菌精製水、注射用水の4種類がある。

常水は日常生活で使う水道水や井戸水と考えてよい。通常、内服で用いる水剤は常水で調剤される。常水には残留塩素や金属類、硬度成分などが微量だが入っている。これらが薬と反応することがあるため、長期保存はできない。

常水から微量成分を除去した水が精製水だ。かつては蒸留して作ったが、いまではイオン交換樹脂による除去が主流だ。最近は、超ろ過といって逆浸透膜や限外ろ過膜を用いる方法もとられている。

精製水で一番気を付けなければいけないのが細菌による汚染だ。細菌がイオン交換樹脂に付着して繁殖し、混入することがある。場合によっては、残留塩素(消毒剤)が含まれている常水の方が、細菌数が少ない場合もある。

点眼剤など微生物が混入しては困る薬には、高圧蒸気滅菌した滅菌精製水を使う。

注射剤は水に溶けた薬が直接体内に入る。従って細菌が存在しないことが絶対条件だが、滅菌精製水は使えない。細菌が作り出した発熱性物質であるエンドトキシンが含まれていることがあるからだ。

エンドトキシンが含まれているかを調べるために、ウサギを使って発熱性物質試験をしている。しかし、注射剤に使用される注射用水に限っては、5年前からエンドトキシン試験法というカブトガニの血球抽出成分を利用した方法で行われている。

この注射用水も2年前までは注射用蒸留水と呼ばれ、経費を掛けて蒸留した精製水しか使えなかった。今では、安価な超ろ過法でエンドトキシンをも除去することが可能となっている