『第98話』 前立腺の肥大は老化現象の一つ

前立腺(せん)は男性にしかない器官で、年をとるにつれて肥大する。

前立腺はぼうこうのすぐ下にあり、肥大すると次第に尿道を周囲から圧迫するようになり、尿の出が悪くなる。

尿が出始めるのに時間がかかる、また出し終わるのに時間がかかる。排尿に勢いがない、残尿感があるなどという自覚症状があれば肥大はすでに始まっている。

ただし55歳以上の男性の約7割がそう感じているというから、これは老化現象の一つともいえる。

進行の速度は人さまざまだが、残尿感をはっきり感じるようになったり、お酒を飲んだ後、尿意があるのにまったく尿が出ないということがあれば、肥大は中程度まで進行している。

ぼうこうに尿が多量に残るようになると尿路感染を起こしやすくなり、腎臓(じんぞう)にも影響が出始める。

進行が進んでいるときはホルモン療法や手術が必要になってくるが、初期段階では生薬が用いられる。

漢方薬の八昧地黄丸(はちみぢおうがん)のほか、トウモロコシ、ライ麦、へーゼル、ネコヤナギ、ハコヤナギ、フランスギク、松の花粉などといった植物成分が頻尿や残尿感などを改善する薬になる。

また高血圧治療薬で尿道の内圧を下げると排尿が楽なる。ほかに前立腺の周囲のはれを取り除くアミノ酸製剤などもある。

前立腺の肥大はゆっくり進行するので薬の服用期間はおのずと長くなる。気長に付き合う心構えが必要だ。お酒の飲み過ぎや長時間のデスクワーク、また男性といえども冷えに注意することが肥大予防につながる