『第102話』 薬で筋肉の収縮抑え失禁を防止

ぼうこうに尿がたまるとそれが刺激となって脳に信号が送られる。脳がこの信号を受けるとぼうこうが収縮し、尿意が起こる。

一方、排尿を抑える機能も生後1~2年ごろまでに出来上がり、意識的に排尿をコントロールしたり、睡眠中は尿意を抑えたりすることが可能となる。

ところが脳梗塞(こうそく)や脳出血、脳腫瘍(しゅよう)などで脳が障害を受けると、この機能が働かなくなる。そうなると尿意が抑えられなくなり、脳の指令がなくてもぼうこうは収縮して失禁するようになる。

また、ぼうこう炎や前立腺(せん)肥大症、前立腺炎ではぼうこうの刺激に対する感覚が高まる。わずかな尿量でも刺激を感じるため、信号が脳に送られたままの状態となり、頻繁に尿意を感じる。しかも尿意は強く、それを抑える機能も追いつかなくなって失禁してしまう。

これが切迫性尿失禁と呼ばれるもので特に高齢者に多い。高齢化時代を迎え、今後ますます患者が増えていくものと思われる。

薬としては、ぼうこう利尿筋という筋肉が収縮するのを抑え、失禁を防止するカルシウム拮抗(きっこう)剤がある。筋肉が収縮するのは細胞内にカルシウムイオンが取り込まれるためで、これを防ぐ働きがある。

またアセチルコリンと呼ばれる神経の刺激を伝達する物質は、ぼうこう括約筋を緩める作用がある。これが緩むとぼうこうの尿の出口が開いて排尿が起こる。従ってこの作用を抑える抗コリン剤も尿失禁には有効だ。

薬の副作用として精神神経用剤、高血圧薬、血管拡張剤の一部の薬には尿失禁を起こす可能性のあるものもある