『第103話』 生物学的利用率、剤形により違い

口から入った薬は消化器で吸収され、血液に入りその濃度を増しながら全身に運ばれ、効果を発揮する。

しかし、薬の一部は吸収されずに排せつされたり、血液に入る前に分解されてしまう。この、薬が血液中に入った割合を生物学的利用率(バイオアベイラビリティ)という。実際には量的な関係だけではなく、薬が血液中に入っていく速度も考慮される。

てんかんに用いるフェニトインには、経口投与する剤形に粉薬、細粒、錠剤がある。これらを同量投与した場合、それぞれの剤形によって血液中の最高濃度とそれに達する時間が異なることが知られている。このため服用しにくいなどの理由で剤形を変更した場合は、効果がなかったり、逆に副作用が現れたりするので細心の注意を払う必要がある。

また、オーストラリアではフェニトインのカプセル剤で、量を調整するために加えた乳酸カルシウムを乳糖に変えたところ、血液中の濃度が上がりすぎ、中毒死亡事故が発生したことがある。

このように、添加する成分、結晶の大きさ、剤形など薬の作り方によって生物学的利用率が全く違ってしまう可能性がある。

いくつかのメーカーから同成分の薬が商品名を変えて出ているが、このようなことがないよう医薬品の製造を申請するときに、生物学的利用率に差がないことを証明するデータを添えることになっている。

しかし、糖尿病のトルブタミドや強心剤のジゴキシンなど、特に製剤方法によって生物学的利用率が異なる薬もある。いつも服用している薬は特に理由がない限り同じ商品名の薬を服用した方がよい