『第107話』 製剤を工夫して薬を浸透させる

職場へもげた履きで通勤し、もっと裸足(はだし)の生活が送れたら水虫は激減するだろう。水虫を起こす白癬菌(はくせんきん)はタンパク質ケラチンを栄養源にして生きている。ケラチンが多い所といえば毛、つめ、角質層などで、手足の指付近が水虫の格好のすみかになる。

しかし、手は1日に何度も洗うため、足に比べて水虫が極端に少ない。足も1日2回以上、せっけんを使って指の間も丹念に洗うと感染しにくくなる。

白癬菌退治の薬としてはすでに殺菌効力に優れたものができている。しかし、これはあくまでも菌体そのものに作用した場合であり、白癬菌はこの薬が容易には届かない厚い角質層の中に潜り込んでいる。

従って製剤を工夫し、いかに角質層の深部まで速やかに強力な薬を浸透させ、菌体と長時間接触させるかが特効薬を生み出すポイントとなる。

いまは内服薬のグリセオフルビンや水虫根治可能な軟膏(なんこう)や液剤がある。しかし、いまひとつ水虫を撲滅できないのは、患者側の根気のなさにある。というのも、薬をつけて1カ月ほどするとかゆみが治まったり、症状が一時的に改善したりするため治療をやめてしまうからだ。かゆみが治まっても白癬菌はまだまだ角質層に残っている完全治癒を望むなら、それからさらに4、5カ月は薬を塗る必要がある。

つめ白癬などは内服薬を併用しても6カ月から1年以上の治療が必要だが、いんきんたむしといったように角質層の薄い部分に寄生した白癬菌は2週間ほどで完治する。

足が蒸れた状態では水虫以外の菌も増殖している。水虫ではないこともあるので、専門医に診てもらい完治を目指したい