『第108話』 梅雨時や夏には薬の保存に注意

梅雨時や夏は、薬の保存に最も気を配らなければならない。

特に散剤(粉薬)は水分を吸収しやすい。これは散剤の表面積が活性炭などの防臭剤と同じように広いこと、そして一度水分を吸収してしまうと薬の成分が溶け出し、水分を蒸発させにくくするためだ。

水分を吸収すると、かびや細菌が増殖しやすくなる。薬にはその成分以外にも量を調節するためにでんぷんや乳糖が加えられている場合が多い。これらは細菌にとって格好の食物となる。

散剤は数種類の成分が混合されていることが多く、湿ってくるとこれらの薬が相互に反応し、成分が分解したり、変色するといった化学的な変化を促進する。また化学的な変化を起こさないまでも、固まってしまい薬の効き目に変化を起こすことも考えられる。これらのことを専門用語で配合変化という。特にジアスターゼ、パンクレアチンといった消化酵素製剤が配合されている薬は、湿りやすくこの傾向が強い。

薬の中には水分が関係しなくても変化を起こす非常に仲の悪い組み合わせもあり、この場合は組み合わせ散剤といって別々に包装して調剤される。

薬局では複数の薬を調合することによって配合変化を起こさないか文献で調べたり、配合変化試験を行い実際に確かめている。しかし、保証できるのは温度20度、湿度50%程度の部屋で保存した場合、薬の処方日数(薬局が指定した日数)までだ。

散剤の包装は、グラシンポリラミネー卜紙などの防湿性のあるものが使われているが、全く水分を通さないわけではない。薬は時期を問わず乾燥剤を入れた缶に保存し、なるべく涼しい場所に保管してもらいたい