『第115話』 納豆を食べると危険なケースも(ワーファリン)

毎日の朝食に納豆が欠かせないという家庭も多い。納豆は食欲を増し、また、その納豆菌の働きで畑の肉といわれる大豆のタンパクの消化吸収が高められる。

納豆は脳血栓や心筋梗塞(こうそく)を防ぐといわれる。が、これは誤解を招く恐れがある。というのも納豆を食べると危険な人がいるからだ。

それは、脳血栓や心筋梗塞といった血栓塞栓症の治療や予防のためにワーファリンを服用している人だ。

ワーファリンは血液が固まるときに必要なビタミンKの働きを抑えて、血液の塊(血栓)ができないようにする薬である。納豆を食べるとビタミンKが腸内で多量に合成される。ワーファリンの薬効はビタミンKが多いほど減弱するため、この薬の添付文書には納豆を控えるよう明記されている。

15年前に既にこのことが証明されていて、同様にビタミンKを多く含むホウレンソウやブロッコリーといった緑色野菜類を1日数百グラム食べると、ワーファリンの抗凝血作用が減弱することも分かっている。

逆に、納豆に含まれるナットウキナーゼという酵素が、試験管内で固まった血液を溶解する作用があることが分かり、薬として利用するための研究も行われている。さらに、健康な人が納豆を食べると血液中の血栓溶解作用が高まったという報告もある。「納豆は脳血栓や心筋梗塞を防ぐ」といわれるのはこのためだろう。

しかし、これはあくまでも健康な人の話であって、ワーファリンを服用している人は納豆を控えるべきだ。

もしもワーファリンを服用しながら納豆を食べている人が急に納豆を食べるのをやめると、それまで納豆によって抑えられていたワーファリンの作用が強く出る恐れがある。このような人がいたら、急に食べるのをやめずに、かかりつけの医師に相談してもらいたい