『第118話』 乾燥唐辛子にはビタミンA豊富

昔、スパイスは薬として使われていた。辛いスパイスはだ液の分泌を数倍高めるという報告もあり、単調な料理を引き締めるとともに食欲増進剤としての効果も大きい。スパイスの中でも唐辛子の消費量は群を抜いている。

唐幸子が普及したのは、単にその辛さと値段の安さからではない。野菜をほとんど取ることができず、貧しい食事を余儀なくされる冬の間も、唐辛子を食べていた農民たちはビタミン不足に陥ることがなかったからだ。唐辛子を食べると体の調子が良いことを経験的に知った農民たちは、多量に食べるためあまり辛くないものを選別するうちに、現在のパプリカと呼ばれる唐辛子の一種にたどり着いたと考えられている。

このパプリカや牛の副腎(ふくじん)からビタミンCを分離し、さらに、乾燥させた後のパプリカにも大量のビタミンCを含んでいることを発見した功績によって、ハンガリーのセント・ジョルジがノーベル賞を受賞している。

また乾燥させた唐辛子にはビタミンAもたくさん含まれる。

唐辛子の辛さになっているのはカプサイシンと呼ばれる物質で、脂肪の分解に一役買っている。

カプサイシンは胃腸で吸収された後、副腎に作用し長時間にわたってアドレナリンの分泌を促進させる。アドレナリンは興奮したときに大量に出るホルモンだが、そのとき筋肉には血液が集められ、体内に蓄えられている脂肪は分解が促進されてエネルギーとなる。実験では最大で通常の8倍のアドレナリンが出たというが、これは人間が激怒した時の量と同じだ。

口の中がカッカするのは仕方ないとしても、食べすぎて頭に血がのぼらないようにしたいものだ