『第120話』 高齢化社会迎え医薬分業必要に

9月6日から5日間にわたり、東京で第53回国際薬学会議がアジアで初めて開催された。参加した諸外国の人から、メリットのある医薬分業がなぜ日本では進んでいないのかと質問された。

病院や医院から薬をもらうことが“日本の常識”となっているが、それは“世界の常識”とは異なる。

厚生省は昨年10月に「21世紀の医薬品のあり方に関する懇談会」を設置し、この6月に最終報告をまとめている。この中に「医薬品の適正使用の推進」という項目がある。

その中では▽的確な診断に基づいて患者の状態にかなった最適の薬剤、剤形と適切な用法・用量を決定し、それに基づき調剤する▽患者が薬剤についての説明を十分理解した後、その効果や副作用が評価され、処方にフィードバックされる-という一連のサイクルを確保することの必要性を強調している。

さらに、経済的な動機によって薬剤の選択や使用がゆがめられてはならないことも指摘している。

現在、医療用医薬品は14,703種ある。医療機関では、この中の一部を事前に用意して患者に薬を出すことになるが、院外処方せんを発行することによって薬を選択する幅は広がり、用量を含めてさらに的確な薬剤選択と情報提供が可能だ。

外国で医薬分業が根づいているのはこうした医薬品適正使用の観点に立ち、メリットが実証されているからだ。

10月1日から秋田大学医学部附属病院が全面的な院外処方せん発行に踏み切っている。

高齢化社会を迎え、代謝機能の低下した高齢者に作用が強い医薬品をいかに適正に使用するかが課題となっている。こうした状況を踏まえた上での過去の常識の見直しが迫られている