『第121話』 血液のリンパ球、免疫機能を担当

人には免疫という病原細菌や異物の侵入を防ぐ防衛能力がある。

しかし、この免疫が患者にとって都合の悪い働きをすることもある。それは臓器を移植したときに起こす拒絶反応だ。移植された臓器を異物と認識し、その臓器が定着することを拒む。

血液などに含まれるリンパ球はこうした免疫機能を担当している。

通常、輸血は他の人から採血した血液を患者に移入する。この中にもリンパ球は入っている。患者の体がこの輸血されたリンパ球を異物と認識し、排除しないと、輸血されたリンパ球は増殖し、逆に患者の方の組織を異物と認識して攻撃を始める。ちょうど拒絶反応と逆の現象が起こる。これが移植片対宿主病(GVHD)だ。

輸血後1、2週間で発病し、発熱、全身的な紅斑(こうはん)が現れ、肝障害、下痢、下血といった症状が続き、最後は骨髄無形性や敗血症で死亡する。

かつては輸血によって移入されたリンパ球を異物と認識できない免疫不全の人にだけ起こる輸血合併症と考えられていたが、今では正常な免疫機能の人でも発症することが分かっている。それは、日本人が遺伝的に均一な集団であるため、移入されたリンパ球を異物と認識できない人がいるためと考えられている。中でも血縁者間の輸血で起こったGVHDの報告が多い。

GVHDを完全に防ぐには、リンパ球の免疫機能を壊してしまうことだ。そのために血液センターでは放射線照射装置を設置し、医師の希望によって実施している。

もう一つは自己血輸血だ。採血が可能な条件が整っていることが必要だが、造血機能を増すエリスロポエチンを投与し、手術に必要な量を事前に自分の血液で用意する方法がある