『第123話』 白内障の治療に専用の点眼液を

年を取るにつれて多くなる目の病気に白内障と緑内障がある。

白内障は目の水晶体(レンズ部分)が濁ってくる病気で、症状が進むと瞳(ひとみ=黒目)の部分が白く見えるため、昔から「しろそこひ」ともいわれている。

濁った場所や進行状況によっては全く自覚症状がないこともあるが、一般に明るい時よりも暗い時の方が見えやすかったり、明るい光の周りに白いもやがかかったようになり、視力が低下する。

水晶体の濁りは老化現象の一つと考えられていて、進行の度合いは違うが、だれにでも起こってくる。先天白内障や糖尿病、風疹(ふうしん)症候群、放射線障害によっても起こるが、こうした原因がなく加齢によるものが老人性白内障だ。その意味では高齢化社会を迎え、増えている疾病の一つだ。

いったん生じた濁りは元に戻すこともその進行を完全に止めることもできない。

濁りの成因はまだ明確ではない。卵の白身が熱で白濁することをタンパク変性というが、水晶体の水溶性タンパクが、代謝異常によって生じたキノイド物質と結合し、不溶性タンパクに変化するタンパク変性を起こして濁ると考えられている。

その結合を阻害する薬がファコリジン点眼液やピノレキシン点眼液だ。このほかにも、不足してくるグルタチオンを補う点眼液などがある。

白内障に使われる点眼液には温度の高い所に置くと分解し、薬の含量が低下してしまう薬があるのでこの場合は冷蔵庫に保存する。点眼液が錠剤と溶解液に分かれていることがあるが、これはこうした含量の低下を防ぐ工夫だ。従って溶解後は速やかに使用する必要がある。

視力低下が著しい場合は眼鏡が必要となるが、濁った水晶体を除去し、眼内レンズ(人工水晶体)を挿入する手術が保険で受けられ、視力の回復が可能だ