『第126話』 更年期障害には自己診断は禁物

老齢人口が増加していることは、これから老年期を迎えようとしている人も増加していることを示している。

特に、女性では閉経を迎える更年期に起こる更年期障害が増加しつつある。

閉経の平均年齢は51歳だが個人差が大きく、性成熟期を過ぎる35歳から卵巣機能は次第に老化し始め、やがて月経不順などが起こり、ほぼ45~55歳で閉経を迎える。

男性では性ホルモンの減少や機能低下が緩やかであるのに比べ、女性ではこれらの変化が急激にやってくる。

どのような変化かというと、まず卵巣機能の低下によって卵巣から出る卵胞ホルモンと黄体ホルモンの分泌が減少する。

これらのホルモンの減少が刺激となって脳の視床下部に伝えられ、下垂体から分泌される卵巣機能を刺激して維持する働きがある性腺(せん)刺激ホルモンを増加させる。

問題は刺激が視床下部に伝え続けられることだ。この視床下部には自律神経(交感神経と副交感神経)の中枢があって、これにも影響を与え自律神経失調を来す。この結果、不定愁訴といわれる肩こり、頭痛、ほてりやどうきといった症状が出てくる。

治療には漢方薬やγ-オリザノール、自律神経調整剤が用いられる。欧米ではホルモン補充療法が広く行われている。卵胞ホルモンによる子宮内膜がんの発生危険率を黄体ホルモンと併用することで減らせることが分かり、再び使われるようになっている。

また、この年齢は子供の結婚や親の介護などが重なり、ストレスの多い時期だ。ホルモンが原因ではなくストレスによって心因性の自律神経失調症になることもある。この場合は精神安定剤が用いられる。

更年期になり不定愁訴か現れても、周りの情報や自己判断で更年期障害だと決め付けてしまうのも問題だ。やはり原因を明確にするため、かかりつけの医師か婦人科で診察を受けることが必要だ