『第129話』 相互作用の薬害防止策に問題点

薬物相互作用による死者14人。これはソリブジンとフルオロウラシル系抗がん剤(以下FU)の併用によって起こった。

9月3日、帯状泡疹(ほうしん)などのウイルスによって起こる皮膚病を治療する抗ウイルス剤ソリブジン発売。

10月13日、緊急安全性情報をファクスで、受ける。患者7人が併用によって血液障害を起こし、うち3人が死亡。

11月25日、その後の調査結果がファックスで入る。薬物相互作用による副作用と推定される症例21例(回復7例、死亡14例)、因果関係がはっきりしない症例2例(回復1例、死亡1例)。緊急安全性情報配付後は新たな副作用事例が起こっていないことと、ユースビル錠(ソリブジンの販売名)の出荷停止と回収措置が伝えられる。

ソリブジンは体内で代謝されるとFUに類似したブロモビニルウラシルになる。これを体内で分解する酵素はFUを分解する酵素と同じだ。このためFUの代謝が阻害されて血液中のFU濃度が上がり、抗がん剤の副作用である白血球減少、血小板減少などの血液障害を引き起こす。このことは開発段階の動物実験から分かっていた。

本人ががん告知を受けていない場合には服用している薬の情報を得にくいこと、添付文書の警告欄に書くべき内容が使用上の注意に「併用は避けること」という簡単な表現で掲載されていたことなどが問題点として指摘されている。だが、最も問題なのは薬物相互作用による薬害を防ぐ方法があるにもかかわらず、日本の医療システムではそれが欠如していることだ。

疾病構造の多様化に伴い、ソリブジンが皮膚科から、FUが内科からといった具合に、複数の診療科から別々に薬が処方されることが多くなる。病院内での医薬品情報の在り方を含めた薬剤業務の見直しを図るとともに、かかりつけ薬局を育成し、薬物相互作用や重複投与をチェックできる医薬分業を推進することが必要だ