『第132話』 冬期うつ病には光治療が効果的

人間の体には、昼と夜とをはっきり区別する時計がある。血圧や体温をつかさどる自律神経や内分泌ホルモンなどにも一定のリズムがあって、昼に行動し、夜眠るのに都合よくできている。

体内の時計は1日が25時間ある。地球の自転の周期(24時間)との調整をとるため、毎日、外部の刺激を受け取って時刻合わせをしている。朝起きて光を浴びる、朝食を取る、通勤・通学をする-など時刻を知るさまざまな因子が、この時刻合わせのために必要だ。

中でも重要なのが目から入る光。規則的な明暗のリズムがあると、決まった時刻に眠くなったり、目覚めやすくなったりする。逆に、残業や夜間労働などで昼夜が逆転したりすると、しばしば睡眠障害になる。海外旅行の際に生じる時差ぼけも、生態のリズムの乱れが原因だ。

また、日照時間が短くなる秋口から元気がなくなり、何をするのもおっくうになるというような症状に悩む人がいる。これは「冬期うつ病」と呼ばれ、光の不足が原因と考えられている。この季節的な要素によって生じるうつ病は、一般的にいううつ病と違って悲壮感がさほどなく、食欲もおう盛になる。普通のうつ病が眠れないのに対し「冬期うつ病」はよく眠れる。そのため、短期間で体重が増える。

このように、光が体のリズムに与える影響は大きく、強い光照射による「光治療」がこれらの障害には有効であることが分かっている。

この治療は、2,500ルックスの光を出す「ライトボックス」で行われる。この光を1日1回、一定時間見るようにすると、1週間ほどで効果が表れる。大きな病院では貸し出しも行われているが、この治療の前には目に異常がないか、前もって検査する必要がある