『第133話』 緑黄色野菜にはがんを防ぐ効果

体の細胞が正常に機能するのは個々の細胞にある遺伝物質DNAがその本来の形を普遍的に保っているからだ。DNAは体を構成する何十兆個もの細胞に対し、それぞれが果たす役割を命じている。

一方、人間の細胞は常にさまざまな化学物質や病原性物質にさらされていて・その中には発がん物質やがんを引き起こすようなウイルスなども含まれる。人体の防御機構がこれらを防ぎ切れずに、DNAが修復不可能な損傷を受けたり突然変異を起こすと、その正常な構造は失われがん化を誘発する。

がんのタイプは200以上あり、発症の原因や兆候、予後も多岐にわたっていることががん克服を困難にしている。それならばと、最近ではがんを抑える研究よりも予防の方に力を入れようとする動きが出ている。つまり発がん因子が体内をめぐっているのなら、がんを防ぐ因子を常に摂取しようというわけだ。

以前から、緑黄色野菜や果物を多く摂取するとがんにかかるリスクが少ないことが疫学的に証明されている。そこで、これらに含まれる有効成分の一つ、ベータカロチンを使った臨床実験が開始された。

ベータカロチンは体内でビタミンAに変わる物質でニンジン、カボチャ・サツマ芋に多く含まれる。ビタミンAを直接多量に取るとビタミンA過剰症を起こすが、ベータカロチンはビタミンAが必要なときだけ転換され、それ以外は排せつされるかそのまま貯蔵されるので過剰症は起きない。

アメリカでは1年前から、緑黄色野菜や果物の商品ラベルに「発がん性を低減する作用がある」旨の表示を政府が認可している。