『第140話』 チアミンを発見、脚気の特効薬に

お米は主食としてだけではなく、薬の世界でも日本人と深い関係がある。脚気(かっけ)の特効薬として知られるチアミン(ビタミンB1)は鈴木梅太郎が1910年に米糠(こめぬか)から発見した。同時期、ポーランド人のフンクも同じ成分を分離し、生命(vital)に必要なアミン(amine)ビタミンと呼んだ。以後、食物中に微量に存在する成長と生命維持に必要な有機化合物をビタミンと呼ぶようになった。脚

気は浮腫(ふしゅ)や運動障害が起こる病気で、進行すると心臓機能障害を起こして死亡する。膝(ひざ)を組んでハンマーでたたく膝蓋腱(しつがいけん)反射法は、脚気や脳梅毒で起こる神経機能障害を調べる検査だ。中国では紀元前200年に「脚気」の名で記録があり、日本では9世紀ごろ、水腫(すいしゅ)型と麻痺(まひ)型が知られていた。今

はほとんどない脚気が問題となったのは、100年前の日清・日露戦争の時代だ。それは前線将兵の4分の1が脚気になったからだ。イギリスで衛生学を学んだ海軍の高木兼寛は、パンを主食とする欧米の海軍で脚気の患者が少なかったことから、原因を食事に求め実験を行った。その結果は日米食を米、パン、牛乳の混食に変えると脚気が激減するという劇的なものだった。これに対し、陸軍は緒方正規が発見した気脚菌を論拠に伝染病説を支持し、日露戦争で多数の犠牲者を出した。しかし、脚気菌の発見は誤りだった。ビ

タミンB1は炭水化物がエネルギーに変換されるときに必要なビタミンで、米を主食とする日本人には不可欠である。また、激しい運動などでもより多く消費される。豚のヒレ肉100グラムには1日に必要なビタミンB1が含まれている。