『第141話』 確実に増す白髪、治療する薬なし

めっきり増えた白髪にはぼう然となることがある。いつまでも若くありたいとはだれしも思うことだが、白髪はその思いとは裏腹に確実に増えていく。

フランス革命で死刑の宣告を受けたマリー・アントワネットは一夜で白髪になったといわれている。このように、ストレスによって突然白髪になったという報告が多数あることから、単なる老化現象ではないとする学者もいる。毛髪の黒さはメラニン色素による。白髪になる原因は二つある。一つはメラニンの生産が止まった場合、もう一つはメラニンを作っている細胞がなくなってしまった場合だ。今のところ白髪を治す薬はなく、白髪染めに頼るしかない。

白髪染めは紀元前3000年の古代エジプトの時代から植物や鉱物を用いて行われている。日本では明治中期までおはぐろ(主成分はタンニン酸第二鉄)を利用して染めていた。明治の後期に入ると、パラフェニレンジアミンを用いた染毛剤が登場する。

染毛剤は一時染毛剤、半永久染毛剤、永久染毛剤の三つに分類できる。カラースプレーなど部分染めに使うのが一時染毛剤、最近流行しているカラーリンスは半永久染毛剤に分類され、髪全体を完全に染めるのが永久染毛剤だ。

日本で主に永久染毛剤として使われているのは酸化染毛剤で、二種類の液から成る。一方にはオルトフェニレンジアミンやアミノフェノールなどの染色前駆体と色調を整えるカップラーと呼ばれる成分から成る酸性染料、染毛効果を高めるアルカリ剤、そして界面活性剤を配合している。もう一方は過酸化水素を主成分とした酸化剤からできている。二つの液を混ぜると、酸化作用によってインド染料が生成する。これが毛髪内でも進行し、しっかり定着する。

酸化染毛剤を使用するときにはパッチテストを行い、アレルギー反応を起こさないか確認する。違うメーカーの染毛剤を使うときも、成分が違うので必ずパッチテストをして使用してもらいたい