『第143話』 寝返りを活用し介護スムーズに

高齢化社会を迎え、家庭内で老人を介護する人が多くなった。特に寝たきり老人の場合は「寝返り」という動作が、介護のポイントになる。排せつや着替えなど毎日の世話は、寝返りを活用することでスムーズにできる。また、この動作を数多く取り入れると寝たきりの改善や床ずれ、肺炎、膀胱(ぼうこう)炎などの予防にもつながる。

床ずれは専門用語で褥創(じょくそう)といい、介護する上で最も注意しなければならない合併症だ。体や寝具の重みによる圧迫が原因で皮膚や皮下組織の血液の巡りが悪くなり、潰瘍(かいよう)ができる。

皮膚の表面が赤くなったり、ただれたりするため、床ずれは皮膚表面だけの変化とみられがちだが、病変はもっと深いところで進行し、皮膚表面に向かって広がってくる。

床ずれは寝かせきりにしないで、座らせたり寝ている向きを変えたりして予防に努めることが大切だ。新しいスーツや寝間着はのりを落とし、よくもんで柔らかくして、しわをのばしてから使う。介護用品を扱っている薬局でエアマット、円座、羊毛マットなどの予防用具を購入して上手に使うとよい。

予防に努めても、皮膚の生理機能低下や活性酸素毒によって防ぎ切れないこともある。そうした場合は、薬物治療や外科的処置が必要になる。床ずれは、初期の段階(皮膚が赤くなる)でくい止めたい。

バランスのとれた食事は床ずれを防ぐためにも大切で、特にタンパク質やビタミン類を十分取るよう心掛ける。

寝返りをさせるときは、いきなり動かさないで必ず声をかけ「イチ、ニイ、サン」と三つ数えてから動かす。麻痺(まひ)がある場合は、麻痺のある方が上になるようにする。麻痺がある方を下にしておくのは20分が限度だ。寝返りをさせるときは、まず顔を寝返る方向に向ける。両手は胸の上に組み、両ひざを立てる。そして初めにひざを、次に背中を軽く押して寝返る方向に向ける。寝返りをさせる目安は2時間に1回だ