『第150話』 患者にも分かる医薬品の情報を
薬の情報は薬事法に規定された添付文書が基本となる。しかし、これに盛り込まれていない情報がある。その情報とは薬が新たに承認審査される中央薬事審議会での審査過程、臨床試験段階での具体的なデータや問題点などだ。
添付文書を補完する情報として1988年に日本病院薬剤師会と日本製薬工業協会が最終協議して示した、最大163項目にのぼる「医薬品インタービューフォーム」(IF)がある。この中には最終的に得られた副作用の発現件数とその割合や注意を促した理由、他の薬を併用したときの効果など、薬を実際に使用する場合のデータが示されている。しかし、IFは法律で定められた資料ではないため、すべての医療機関へは配付されていない。当センターでも製薬メーカーに依頼して入手しているのが現状だ。
ことし4月11日にさらに一歩踏み込んだ内容の「新医薬品承認審査概要」(サマリーベーシス・オブ・アプルーバル、略称SAB)が厚生省から発表された。第1号となったのは抗がん剤「塩酸イリノテカン」で、A4判、78ページに及ぶ。この内容は昨年10月に「新医薬品承認概要のあり方に関する検討会」の報告書に沿って作成された。注目されるのは初期開発段階からの臨床試験成績が盛り込まれ、投与量と投与間隔の決定した経緯、有効ではなかったがんの種類、投与量と副作用の関係、副作用を軽減するために試みた方法と効果などが具体的なデータとともに記述されている。薬が審査される過程が不明りょうだという批判にこたえた専門家向けの内容だ。
確かに、医療に携わる人にとっては有用な情報だが、厚生省から示された情報をいかにして分かりやすく患者に伝えるか、といつた問題はまだ解決されたわけではない。今後さらに平易に書かれた患者向け情報が必要だ