『第151話』 トリカブトに毒、新芽には注意を
ことしも山菜採りシーズンがやってきた。山へのハイキングがてら収穫する喜びも味わえるというのでちょっとしたブームになっているが、毎年のように起こるのがトリカブトの新芽を山菜と間違えて食べ、中毒を起こすケースだ。
トリカブトは、紫の鳥帽子(えぼし)のような形をした花をつけるので、花が咲いた状態では見間違いは少ない。しかし、新芽はシドケやニリンソウ、葉の形はゲンノショウコやセリなどと似ている。
美しい花とは対照的に、トリカブトの根には猛毒成分のアコニチンが含まれる。トリカブトが殺人目的に使用されることが度々あるが、自然がくれたこの毒をアイヌの人たちは仕掛け弓の矢毒に用い、生活の糧を得るために利用してきた。
トリカブトの根は「附子(ぶし)」と呼ばれ、狂言の題名にもなっているが、附子以外にも鳥頭(うず)、天雄(てんゆう)と呼んで根を区別し、鎮痛および抗炎症効果を持つ漢方用薬として使われる。もちろん、そのままでは使用できないので猛毒成分アコチンの合有量を下げ、毒性や副作用を軽減するような「修冶(しゅうち)」と呼ばれる処理をする。
漢方薬にもなっているのだからと安易に考え、トリカブトの根を焼酎(しょうちゅう)に漬け込み薬用酒にして飲んで生死の境をさまよった人もいる。飲み込むと唇がしびれて呼吸が荒くなり、眼球が膨らんで突出する。そして手足が麻癖(まひ)し、よだれを流して言語不明りょうになる。やがて呼吸麻輝を経て死に至る。
今のところトリカブトの中毒に対する解毒剤はない。とにかく体の水分代謝を速め、毒物の排せつを促進させる処置が有効である