『第152話』 妊娠中の薬服用、細心の注意必要
すべての薬が胎児に奇形を起こすわけではないが、妊娠期間中は薬の服用が気になる。薬を服用中に妊娠を知って慌てて問い合わせてくる例が多いが、胎児の形態が整う3カ月までが胎児に影響を起こしやすい期間。妊娠を知ったときには既にこの期間を過ぎている。妊娠を希望しているのであれば、定期的に一般用妊娠検査薬で調べ、薬が必要ならば必ず医師に受診して、妊娠を希望していることを告げてから薬を処方してもらうべきだ。
奇形を引き起こすのは、女性が薬を服用している場合だけではない。男性が特定の薬を服用することによっても、奇形が発生することがある。
イヌサフランから抽出されたコルヒチンは、特に男性に多い痛風発作の前兆期に服用する薬だ。このコルヒチンは植物細胞が分裂するときに影響して染色体を2倍に増やすため、これを応用して種なしスイカなどを作るときに使われていた。同様に動物の精細胞にも影響し、先天異常児を出産する可能性があるので、少なくとも服用を中止してから2、3カ月後に受精するべきだ。また、服用を中止すれば回復するが、完全無精子症を起こすことも報告されている。
重症の乾癬(かんせん)に使われる角化性皮膚疾患治療剤エトレチナートも精子形成に異常を起こすことが報告されているので、服用中止後6カ月間は避妊が必要だ。女性の場合は服用中止後2年間は避妊が必要となる。エトレチナートはビタミンAの類似化合物だが、ビタミンAを過剰に摂取していた妊婦が出産した子供に奇形がみられた報告がある。
しかしながら、妊娠中でも薬の服用が必要な場合がある。過度の心配よりも正しい情報を入手して適切に服用することが必要だ