『第156話』 「幸福感」は一時、後に待つ地獄…

米国留学を経験した学生によると、米国ではパーティーや寮生活など日常生活の中で大麻に接する機会が少なくないという。

1971年、WHO(世界保健機関)が大麻はさほど有害ではないというリポートを出したため、米国では事実上の解禁状態となってしまった。その後、このリポートの内容に多くの間違いがあることが立証されたが「たばこの害よりまだましだ」という誤った大麻擁護論を根強く残す結果となった。

大麻は世界各地に自生しているクワ科の植物で高さ数メートルに生長し、繊維の原料になる。その変種であるインド大麻の樹脂は、幻覚、妄想状態を引き起こす成分を多く含んでいる。

マリファナは大麻草を乾燥させたもの。雌株の樹脂だけを集めて濃縮したものは「ハッシシ」と呼ばれ、マリファナよりも強い精神作用を示す。

大麻を吸った後の陶酔感はアルコールによる酩酊(めいてい)状態とは異なり、意識ははっきりしている。視覚、聴覚が研ぎ澄まされるため、色が鮮やかに見えるようになったり音楽を聴くことで至福感を味わうことができたりするため、芸術家やミュージシャンが乱用する傾向がある。

しかし、大麻の幻覚作用はこれだけでは終わらない。陶酔感の後、今度は怪物や化け物に追いかけられるという幻覚に襲われ、パニック状態に陥る。幻覚から逃れようとして夢中で走り出し、ビルの屋上から飛び降りたりする人もいる。そうした恐ろしい体験を小説にしてしまう人もいるほどで、厳しい取り締まりにもかかわらず、米国内の麻薬汚染が深刻であることを物語っている。

大麻を常用すると、やがて思考能力に障害が表れ、大麻精神病ともいわれる無気力状態に陥る。幸福感に浸ることができるのは一時で、後には地獄が待っていることを忘れてはならない