『第163話』 患者の安全守る情報伝達迅速に
メーカーによる医薬品情報の主な伝達手段はいまだに郵送によるものだ。特に月、火曜日は薬事専門新聞も届き、机の上は郵便物の山になる。
この中には、薬の履歴書とでも言うべき医薬品の添付文書を改訂した通知がある。改訂の内容は、市販開始後の調査で判明した新たな副作用に関するものや、厚生省の指示によって追加された項目で、週に50品目程度送られてくる。
医薬品製造メーカーは全国に600社以上あり、医療用医薬品だけで14,194品目を製造している。しかし、医薬品情報を送付してくれるメーカーはごく一部。仮にすべてのメーカーから情報が送られたとしたら、相当の人員を配置しないと対応できなくなる。
最近、その心配が現実味を増してきた。その背景にあるのが、来年の7月1日から施行される製造物責任法(PL法)の制定だ。
PL法は医薬品の欠陥によって消費者に被害が出た場合、メーカーに過失がなくても、賠償責任はメーカーが負うというものだ。
果たして医薬品の副作用は欠陥なのだろうか。厚生省製造物責任制度等特別部会はその報告書の中で医師、歯科医師、薬剤師などに対する指示、警告が適切に行われていれば欠陥に該当しないとしている。言い換えると、医薬品製造メーカーには今以上に医薬品情報を的確に伝達する義務が生じてきたわけだ。
メーカーにはMRと呼ばれる医薬品情報担当者がいるが、当センター薬局を定期的に訪れ、医薬品情報を伝達しているところはない。しかし、ソリブジンの問題や最近起こった異種医薬品の混入などにみられる通り、患者さんの安全を確保するためには緊急に情報を提供し、対応策を講じる必要がある。
PL法のあるなしにかかわらず、医薬品情報を迅速に医療機関に伝達するシステムを確立することが望まれている