『第165話』 子供への薬投与量に配慮が必要
ケーキを取り合う兄弟げんか。半分に割るのが平等なのか、体の大きさによって分けるのがいいのか、親として子供を納得させるのに苦労する。
薬の場合は、体の大きさによって投与する分量を加減するのが一般原則。しかし、子供に対する投与量は、ただ単に大人に使用する量との比較で決めるわけにはいかない。
子供に投与する量を小児薬用量という。これを算出するには体表面積、体重、年齢などを考慮して求める方法がある。
身長、体重から求めた体表面積を使って計算する方法は、エネルギーの代謝や循環血液量と一致していると考えられていて、よく利用される。抗生物質では、体重当たりの薬用量が示されるケースも多くなってきた。
年齢から計算するアウスベルガーの式は、その年齢の平均体表面積から計算した値に近くなるように工夫されているが、個々の成長度が考慮されていない点で注意が必要だ。また、この式は新生児や6カ月以下の幼児には適用しない。これをさらに補正して、新生児の項目を付け加えたハルナックの表がある。感冒薬などの大衆薬では、ほぼこの表に準じた小児薬用量になっている。
投与量を算出する最も正確な方法としては、血液中の薬物濃度を計る方法があるが、すべての薬に適用できるまでにはなっていない。
このほかにも、小児薬用量を算出するにはさまざまな配慮が必要だ。例えば、けいれんを抑えるフェノバルビタール。小児は大人と比べ、この薬に対する感受性が低く、体重当たりから計算すると大人が使う量の約2倍必要ということになってしまう。体重から算出する方法では、適正な量を求めることができない。子供の代謝が大人と大きく異なることを考えれば、成人量から計算するところに無理もある。個々の医薬品について十分検討された小児薬用量のデータが必要だ。
医療機関から出された大人の薬を適当に加減して子供に飲ませることは最も危険だ