『第168話』 ビタミン剤投与、1日からは制限
人が生命を維持するためには何が必要だろうか。水や酸素のほかに、体を動かすエネルギー源として、まず栄養を取ることが必要だ。この体が必要とする栄養素には糖質(炭水化物)、タンパク質、脂肪があり、これを三大栄養素という。
このほかにも、多くは必要としないが欠乏するとさまざまな病気が起こる微量栄養素がある。このうち、鉄分や亜鉛のよう無機化合物をミネラル、チアミン(ビタミンB1)やアスコルビン酸(ビタミンC)といった有機化合物をビタミンという。
特に高齢者は食欲不振などによる食べ残しで、これらが摂取不足になりがちだ。
10月1日からの保険診療報酬の改定では、原則として、明らかにビタミンの欠乏が原因である病気でないとビタミンB群やビタミンCの投与ができなくなる。これについ.て異議を唱える学者も多いが、食事で栄養を取ることができる入院患者については、既に2年前かららビタミン剤の投与制限が行われてきた。
ビタミンB群の欠乏症には脚気(かっけ)、脂漏性皮膚炎やペラグラといわれる皮膚炎、悪性貧血がある。また、ビタミンCが欠乏すると、コロンブスの大航海時代に大変恐れられた壊血病になる。
ビタミンCにはコラーゲンの合成を促進させる作用がある。このコラーゲンには細胞同士をしっかりと結び付ける働きがあり、真皮ではその乾燥重量の75%がコラーゲンだ。血管にも多くあり、ビタミンCが不足すると血管が弱くなって出血し、壊血病の症状が表れる。
人や猿などの霊長類、そしてモルモットはビタミンCを体の中で作ることができない。従って、積極的に新鮮な野菜や果物を摂取する必要がある。特に高齢で独り暮らしの男性は要注意だ。
ビタミン投与制限の背景には食事から摂取できるということがあるが、食欲がないときもある。このようなときは医師や薬剤師に相談し、大衆薬を利用することも必要だ