『第170話』 サイトカインは発熱と睡眠誘う

風邪をひくと熱が出たり、体がだるくなって横になりたくなったりする。体内には睡眠を誘発する物質が数多くあるが、体の外から侵入してきたウイルスや細菌が引き金になって放出されるサイトカインもその一つだ。

ウイルス抑制因子であるサイトカインは、血中に放出されると脳に働いて発熱と睡眠を誘発する。発熱は生体の防御反応で、体内に入った異物に抵抗し、さらに人は眠ることで体の免疫機能を高めている。

睡眠不足や不眠もストレスとなって副腎(ふくじん)からステロイドホルモンを分泌させる。このホルモンには免疫力を低下させる働きがあるので、十分な睡眠をとることが必要だ。

睡眠にはノンレム睡眠とレム睡眠という二つの眠りのリズムがある。ノンレム睡眠のとき、人間の脳は深い眠りにつく。逆にレム睡眠では体の方が深い眠りに入る。夢を見るのはレム睡眠のときだ。一般にレム睡眠の直前に目覚めるのが最も気持ちがいいとされている。レム睡眠は眠ってからおおむね90分ごとに訪れるから、目覚めの悪い人は起きたい時間から逆算して眠る方法もある。

心地よい睡眠を得るためには、寝る前に温めた牛乳を飲むとよい。牛乳の中には必須(ひっす)アミノ酸の一種であるトリプトファンが含まれていて、脳内でセロトニンという物質に変化する。セロトニンが不足すると寝つきが悪くなったり、眠り浅く、短くなったりする。トリプトファンは牛乳のほか、カツオやマグロ、ブリといった魚類に多く含まれる。

また、牛乳にはカルシウムも多く含まれていることが快眠をもたらす理由になっている。カルシウムはいらいらした神経を静めるとともに、脳の睡眠中枢が働く上で必要な物質でもあるからだ