『第171話』 処方さえ合えばすぐ効く漢方薬
漢方薬は体質の改善や体力の回復を願って長期的に服用する人が多い。作用が穏やかで副作用がない、また効き目がゆっくりとじわじわ表れるといったイメージがあるからだろう。
しかし、漢方薬は使う人にその処方が合ってさえいれば、飲んですぐに効き目を表すものがある。
代表的なものに麻黄を含む処方がある。麻黄は急性気管支炎でゼイゼイいう咳(せき)に使う。麻黄が入った小青竜湯(しょうせいりゅうとう)はくしゃみと水のように薄い鼻水が出て止まらず、咳や痰(たん)が多い症状に有効だ。また熱はないが、咳がひどく汗が出て口が乾く人には麻杏甘石湯(まきょうかんせいとう)がよい。
おなじみの葛根湯(かっこんとう)にも麻黄が入っている。葛根湯は首の後ろがこわばり悪寒、発熱、頭痛があるが汗が出ていないときに効く。風邪以外にも肩こりや上半身の神経痛、じんましんなどにも使われる。
ただし、効き目の速い漢方薬には強い成分が入っていることがあるので副作用にも注意が必要だ。麻黄には不眠、排尿困難、動悸(どうき)、胃腸障害などの副作用がある。
風邪には葛根湯と考える人が多いが、ひき始めには葛根湯よりも桂枝湯(けいしとう)の方が有効な人も多く、老人や子供なら香蘇散(こうそさん)の場合もある。
漢方の難しさは患者一人ひとりの体質を見極めた上で処方を選択しないとほとんど効果がないことにある。熱一つをとってもどんな性質の熱なのか、熱と同時に寒けがあるか、腹部の緊張は強いかどうかなど、さまざまな検討を加えた結果、処方が決まる。素人が判断して飲めるような薬ではない。必ず、漢方に熟知した医師に処方をお願いしよう