『第172話』 常に注意したい、血糖下がり過ぎ
糖尿病には二つのタイプがある。30歳以前に発症し、多飲、多尿、口の渇きが表れ、急激に体重が減少するⅠ型は、膵臓(すいぞう)からのインスリンの分泌が極度に低下することによる。このタイプは自分でインスリンの注射をしなければ生命を維持できない。
インスリンは血液中のブドウ糖の濃度、すなわち血糖値を下げるホルモンである。
一方、インスリンが正常に分泌されていても、過食によって血糖値が高過ぎると相対的にインスリンが不足して膵臓からのインスリン分泌が追いつかなくなる。このタイプがⅡ型で30~40代の肥満傾向の人にじわじわと始まる。日本の糖尿病患者の90%以上を占めている。
血糖値が高いままだと体の中でも特に細い血管が障害を受け、出血しやすくなる。糖尿病で眼底出血や失明が起きるのは目の中の網膜にたくさんの細い血管が集まっているからだ。
腎臓(じんぞう)の毛細血管が障害を受けると、体の中の老廃物をろ過して尿を作り、体外へ出すことができなくなる。症状によっては人工透析や腎移植まで必要になる。
注射用インスリン製剤や膵臓のインスリン分泌を促進させる内服薬が治療に使われるが、これらの薬剤は血糖を下げることだけに働くので常に血糖の下がり過ぎを考慮しなくてはならない。
低血糖の状態になると異常な空腹感、脱力感、発汗、手足の震えや目のちらつきなどが起きてくる。直ちに甘いものや食物を食べるようにする。
低血糖を誘発する薬剤も多い。アスピリンをはじめ、胃潰瘍(かいよう)に効くH2ブロッカーや抗ヒスタミン剤、高血圧用剤のβブロッカーなどとの併用には十分な注意が必要だ