『第178話』 着色剤を減らし、より安全性確保
薬にはカラフルな色がついているものがある。糖衣錠やカプセル剤では医薬品用着色剤を使用しているが、アズレン(青色)やビタミンB2(黄色)のように、成分そのものの色を利用している薬もある。例えば、目薬の成分にビタミンB12を入れれば赤色になる。漢方胃腸薬であれば茶色という具合だ。
しかし、ビタミンCはレモンのイメージが強く、黄色と思っている人も多いが白色だ。イメージは重要で、白いビタミンCではかえって効き目がないように思えてしまうから不思議だ。高齢者は赤色に毒薬のイメージを持っているためか、赤い錠剤を嫌う人が多い。
こうした薬の色は意味もなくつけられているわけではない。薬の製造工程では、他の薬が混入していないかを確認するために使う。また、薬を調剤するときには処方せんに書かれた薬と合っているかを識別する情報になる。
特に重要なのは患者さんの誤飲を防ぐということだ。薬はほとんど同じ型で見分けがつけにくい。そこで、同じ薬をダブって飲むことがないように判別できるようにしている。
粉薬(散剤)では微量の薬を安全に服用させるために、乳糖やでんぷんを加えた「倍薬」を使うことがある。「倍薬」を作るときには、原料となる医薬品が無色であれば、少量の着色剤を入れて均一に混合されているかを確認する。規則で決まっているわけではないが、原薬が毒薬なら青色に、劇薬であれば赤色に着色して、他の散剤と識別できるようにしている。
今でも食用黄色四号(タートラジン)は食品の着色剤として使われているが、アスピリンアレルギー患者がこの色素を摂取すると発疹(はっしん)やぜんそくを誘発することが分かり、薬の着色には使わないようになった。より安全性を確保するため、最近の薬はやや色が薄くなって、着色剤の使用量が減っている