『第182話』 大震災に備えて、医療体制確立を
阪神大震災の被災者に心よりお見舞いを申し上げます。
震災によって、病院は壊滅的な打撃を受け、高度な医療機器が使えず、救急医療に支障を来した。さらに水道や電気の供給停止は、消毒剤の調製や煮沸消毒といった、手術時に必要とする基本的な処置や人工透析に影響を与えた。
現在、医薬品関係の救援物資は消防学校グラウンドと産貿ホールの2カ所に集積されている。
医薬品は集めただけでは使うことができない。約30人の薬剤師ボランティアはこの施設で医薬品を管理し、集積された医薬品を大衆楽と医療用薬に分け、さらに薬効ごとに分類し、兵庫県保健所(7カ所)と神戸市保健所(6カ所)を中継基地として、7カ所の救護所に医薬品を供給している。医療機関へはこれとは別に、医薬品卸からの供給ルートが確保されている。
震災間もない時点では創傷、火傷など外科用医薬品を必要とした。現在は抗生物質のほか、高血圧、糖尿病、心疾患などの病状を安定させる長期投与薬、震災や集団生活のストレスによる不眠に苦しんでいる人たちのため精神安定剤や睡眠薬を必要としている。
今後、衛生状態の悪化に伴い大衆薬の下痢止めや風邪薬の供給も必要になってくる。
救護センターを訪れる患者は、服用していた長期投与薬の医薬品名を知らない人が多い、こうした問い合わせに応じるため、医療チームに配属された薬剤師は医薬品の鑑別などに必要な書籍を携帯している。
院外処方せんによって服用している医薬品名が分かるので、緊急時に備えて服用している医薬品名を書き留めておく必要がある。
阪神大震災によって、約35カ所の薬局が全壊した。この状態の中で医薬品を現地で調達することは難しい。医薬品には有効期限があり、地震に備えて備蓄することも困難だ。むしろ隣人のために緊急に必要な医薬品を各県で計画的に集め、医療班を派遣できる体制を確立しておくことが必要ではなかろうか