『第184話』 鉄剤を服用すれば速やかに貧血回復

男性よりも女性の方が、レバーやひじきなど鉄分を多く含む食品を意識的に摂取しようとする。

体の中の鉄分の65%以上が、ヘモグロビンという形で血液中の赤血球の中に存在する。

ヘモグロビンはヘムという鉄色素とグロビンというタンパク質がくっついた物質で、肺から受け取った酸素を体の隅々の組織に運んでいく。

このヘモグロビンが不足した状態を鉄欠乏性貧血という。一般的に貧血と呼んでいるのはこれにあたる。

生理や出産がある女性は男性よりも貧血を起こしやすいが、胃かいようや痔(じ)による出血などから男性も貧血になることがある。ダイエット志向による偏食で鉄分が不足し、貧血になる若い女性も多い。

ヘモグロビンの不足で酸素の運搬能力が落ちて、十分な酸素を受け取ることができなかった組織は、スムーズに代謝を行うことができない。そのため、けん怠感や疲労感を感じやすくなり、息切れ、動悸(どうき)、目まい、口内炎などの症状が表れてくる。

鉄欠乏性貧血には硫酸鉄やフマル酸第一鉄といった文字通り鉄剤を服用する。鉄剤により貧血の症状は速やかに回復するが、体に貯蔵されるべき鉄分の量が正常値にもどるには3~6カ月間ほどの服用が必要になる。

鉄剤はテトラサイクリン系の抗生物質や制酸剤、タンニン酸などと併用すると吸収が悪くなる。また、抗炎症鎮痛剤と併用すると、強い胃刺激症状が出ることもある。鉄剤を服用中の人が市販薬を購入するとき、これらの相互作用が生じないか薬剤師に相談してほしい。

また、鉄剤を服用すると便の色が黒色になることがあるので、覚えておいてほしい