『第185話』 治療法分からぬアルツハイマー
ある患者さんがお医者さんに「長生きをするにはどうしたらいいでしょうか」と尋ねたところ、「死なないことです」と答えたという。これ以上の名答はないが、長生きという言葉には単に長く生きるというだけでなく、寝たきりや痴呆(ちほう)にならずに、という意味が込められている。
日本人の老人痴呆は現在約50万人いるが、このまま平均寿命が延びていくと、21世紀には今の3倍以上に達するといわれる。
老人の痴呆は大きく分けて脳血管障害の後遺症として痴呆が表れるものとアルツハイマー型がある。アルツハイマー型痴呆はドイツの医師アルツハイマーによって発見、命名された。
「脳が消えていくような病気」と表現されるように脳の委縮が特徴だが、原因も治療法も全く分かっていない。脳血管障害型も治療法は特にない。
痴呆になりたくない理由には、痴呆患者の問題行動がある。徘徊(はいかい)をはじめ、自分の便をたんすにしまったり食べたりといった、人格を失ったかのような行動もあり、家族や介護者も失意や悲嘆の中で疲れ果ててしまう。
そんな中、さまざまな試みから次のようなことが報告されている。徘徊は自分がどこにいるか分からない不安から起こるものなので、かぎをかけて部屋に閉じ込めたりするのは逆効果であり、日に2回散歩に連れ出すと徘徊性や攻撃性が少なくなる。
また、患者に残されている記憶をそれ以上なくさないよう、その人の人生の中で一番光り輝いていた時代の印象深い品や写真、家具などを部屋に置くなどの工夫が必要だ。
特別な疾患がなければ薬剤は必要ない。
本県は10年後には日本一老人の多い県になると予想されている