『第188話』 肥満とは関係なく子供が糖尿病発症
インフルエンザ流行の陰で、思いがけない運命に出合うことがある。
友人の小学生の娘も風邪にかかった。熱も下がり治ったのだが、寝起きが悪く元気もない。しりをたたいて学校に行かせたが、学校から呼び出しがかかり病院へ連れていったという。
診断の結果はインスリン依存型糖尿病(IDDM)だった。「一生涯インスリンを注射して血糖値を下げなければならないのか」という悲痛な問いかけに「そうだ」と答えるしかなかった。
症状の表れ方はさまざまあるが、典型的な例では、風邪をひいた後、だるさが残り甘い清涼飲料水を欲しがる。このため、発見が2、3カ月遅れてしまうこともある。このほか、夜間の尿量が増え、急に夜尿をするようになることもある。
IDDMはインスリン非依存型糖尿病(成人型糖尿病)とは異なり、過食や運動不足による肥満とは関係なく発症する。その子もやせているくらいだ。
発症のピークは12歳前後で、被患は小児人口10万人に対して約1人、全糖尿病患者の約5%がIDDMだ。
ハワイの日系人ではこの数値が4倍、アメリカでは18倍に跳ね上がる。また、ノルウェーでは依存型と非依存型が半々となっていて、日本でも増加傾向にある。この背景には、人種差だけではなく食生活の欧米化があると思われる。
IDDMの原因は自己免疫疾患と考えられている。インスリンは膵臓(すいぞう)にあるランゲルハンス島のβ細胞で作られるが、これがランゲルハンス島細胞抗体の攻撃を受けて破壊されてしまう。遺伝的素因もあるが、多くの発症例ではウイルス感染(インフルエンザ、おたふく風邪など)や化学物質がこの引き金となっていることが疑われ、予防することはできない。
現在、遺伝子治療やβ細胞を破壊する抗体を取り除く研究が行われている