『第194話』 コレステロール合成阻害に新薬
コレステロールには善玉と悪玉があり、悪玉を減らし善玉を増やすと動脈硬化の予防につながる。
一般に血中のコレステロール値が高くなったときは、薬剤を使用する前に最低3カ月以上の食事療法を試みる。卵黄やバター、モツ類などの食品や動物性脂肪の摂取を制限し、1日のコレステロール摂取量は少なくとも250ミリグラム以下に抑える。
ただしコレステロール値は低ければ低いほどいいというわけではない。この値が低過ぎると血管がもろくなり、脳出血が起きやすくなる。
実際、コレステロールは生体内でも合成され、中でも肝臓で合成されるものが血中のコレステロール値に与える影響は食物よりむしろ大きい。
近年、生体内のコレステロール合成を阻害することにより、コレステロール値を少量で確実にしかも安全に下げる薬が開発された。
研究開始から発売まで十八年もかかったプラバスタチンという薬は臓器選択性という優れた特徴をもっている。この薬は小腸と肝臓でのコレステロール合成だけを阻害し、それ以外の臓器での合成には影響を与えない。
例えば、副腎(ふくじん)や性腺(せいせん)ではコレステロールをステロイドホルモンの原料にしている。この臓器にも薬が作用してコレステロールの合成を阻害してしまうと、ホルモンのバランスを崩すという副作用が出てしまう。
さらにこの楽の良い点は、血中の悪玉コレステロールを減らし、善玉を増やすといった働きがあることだ。
コレステロールの合成は夜間に進むことが分かっている。従ってこの薬を1日1回だけ飲む場合は夕食後が望ましい