『第196話』 エボラウイルス感染に注意払え

エボラ出血熱。世界を恐怖のどん底に陥れている伝染病だ。既にザイール中部の都市キクウィトでは120人以上が死亡、米防疫センター(CDC)によって町は封鎖された。

1976年、スーダンとザイールで出血熱の大流行が起こり、570人の死者が出た。近くを流れる川の名前からエボラ出血熱という名がついた。

原因菌はフィロウイルス科に属するエボラウイルス。ウイルスの形状は球状がほとんどだが、このウイルスは特異な紐状(ひもじょう)をしている。

エボラウイルスの自然界での宿主(ウイルスを保持している動物)、生息状況、治療方法、そして感染例も少なく19年間も潜み続けた理由など、多くのなぞに包まれたウイルスだ。このため、最も危険度・致死率が高い「レベル4」のウイルスに分類されている。

感染経路は患者の分泌物、血液、排せつ物から直接接触感染を起こすと考えられている。しかし、空気感染を起こすという報告もあり、今後ウイルスが突然変異を起こしていて、インフルエンザのように猛威を振るう可能性が無いとはいえない。

感染すると通常3日以内に風邪よう症状が表れる。ウイルスが細胞内に入り増殖を始めると、感染者の毛細血管はウイルスとの戦いに敗れた血球で詰まり溶け出していく。感染後6日には目、耳、鼻からの出血が止まらず、口からは溶けた体内組織が吐き出され、感染9日目にはほとんどの患者が死亡する。

最近はエイズに見られるようにウイルスによる新たな感染症が多くなってきている。世界は狭くなり、人の交流が激しく行われるようになった。まだ、.未開地の開発によって、かつて接したことのない新たなウイルスと接触する機会も増えた。90年に発見されたサビアウイルス、93年米国南部で猛威を振るった新種のハンタウイルスなど研究を進める速さ以上に新たなウイルスが発見されている。

幸いにして日本は島国。防疫態勢の強化と感染者が出た場合の気密性の高い高度安全病棟の確保が望まれる