『第205話』 過剰なジュース、糖尿病の危険性
暑い夏。したたり落ちる汗。のどが渇き清涼飲料水を流し込む。
失った水分を補給することは重要だが、糖分の多い清涼飲料水を飲み過ぎて糖尿病に陥り、こん睡状態になることもある。
通称この病態を、清涼飲料水の入っている容器名からペットボトル症候群と呼ぶ。清涼飲料水がペットボトルとして発売されるようになったのは1993年からだが、1992年の日本糖尿病学会総会でこの通称が初めて使われている。
清涼飲料水は平均すると10%の糖分を含んでいる。1.5リットルのペットボトルであれば150グラムの糖分が含まれていることになる。
多量の糖分が体に取り込まれると、膵臓(すいぞう)からインシュリンが分泌されて、肝臓や筋肉での糖の取り込みが進み、血糖値は速やかに元の値になる。糖尿病患者ではこのインシュリンの分泌が不十分であったり、全く分泌されなかったりして肝臓からの糖放出が抑えられず、さらに肝臓、筋肉での糖の取り込みが不十分となって高血糖になる。
過量の糖を摂取している肥満の人はよりインシュリンを必要としていて、肝臓に取り込まれた過量の糖はグリコーゲンや脂肪に合成されて蓄積され肥満体を形成する。さらに糖を摂取し続けると、インシュリンを分泌する細胞が疲れで、分泌量が低下し、やがて糖尿病になると考えられている。
インシュリン分泌量が低下しているところに、多量の糖分を摂取すると高血糖になるだけではなく、貯蔵していた脂肪の分解が始まり、さらに高血糖を促進する。このとき短期間で急激な体重の減少や多尿があり、口渇のため、さら多量の清涼飲料水を飲んで悪循環が生じる。
脂肪の利用がうまくいかないと血中の脂肪酸の量が増え、これは比較的強い酸であるアセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸といったケトン体となって、強い腹痛を伴うケトアシドーシスを引き起こし、こん睡状態になる。
ペットボトル症候群は肥満傾向にある人が多量の糖分を取ったとき起こりやすい。
日ごろから、高脂肪のスナック菓子などの取り過ぎも併せて注意したい