『第206話』 廃油せっけんの作り方には注意

脂肪酸のナトリウム塩がせっけんのことだと分かればかなりの化学通だ。塩といってもさまざまなものがある。食塩もそのうちの一つだ。塩素とナトリウムで構成されているが、塩素の代わりに脂肪酸を使えば、せっけんになる。昔は、脂肪酸に椰子(やし)の実油などを使って、水酸化ナトリウムでケン化して作った。最近では公害が問題となって、てんぷら油などの廃油の再利用でせっけんを作ることを、実践している方もいるようだ。

専門用語ではせっけんを陰イオン界面活性剤という。脂肪酸の部分が油になじむ脂溶性、ナトリウムの部分が水になじむ水溶性になっているため、油と水の界面(接している部分)を活性化して両者を混ぜることができるようになる。この性質を利用して油性の汚れの部分を水に溶かすことで、汚れが取れる。

工業的にせっけんを作るとき、ナトリウムを供給する原料に劇物の水酸化ナトリウムを使っているが、家庭で安易に水酸化ナトリウムを使うと危険な場合がある。それは、水酸化ナトリウムが強アルカリ性で腐蝕性が強く、皮膚につけたままにすれば、やけどを起こし、誤って目に入れば失明の危険性もある。同様に、せっけんが出来上がった後、余分な水酸化ナトリウムが除かれていないと危険だ。

実際の報告例では、ある消費者協会が作った14種類の手作りせっけんを調べたところ、アルカリ性か酸性かを示す指標のPHが12以上のせっけんが8種あったという。通常、作ってすぐの場合約11で強アルカリ性、これが3週間から1カ月たつと8~9(中性は7)となって安定する。

家庭内で作るシャボン玉液なども原料に何を使うか吟味し、安全性を確認して作ることが必要だ