『第216話』 ストレッサーで胃が自らを消化

ストレスという言葉があまりにも浸透してしまった現代。ストレスをためないことを目標にしているうちに、その目標がいつしかストレスになっていることがある。

ストレスという言葉はもともと物理学で使われる用語で、スプリングやゴム球に力を加えた時に生じる。「歪(びず)み」のことをいう。

マウスをおぼれさせる実験をするとやがてマウスの胃にかいようができる。このように体にも歪みが生じることをストレスと呼び、その原因となったおぼれさせるという行為はストレッサーと呼ばれる。

人間もさまざまなストレッサーにさらされるとまず胃がやられる。なぜ消化器官の一つである胃が簡単にストレス状態に陥ってしまうのだろうか?

胃液には強い塩酸とタンパク質を分解するペプシンと呼ばれる酵素が入っている。胃自体もタンパク質からできているのでこのままでは胃液で消化分解されてしまう。そこで胃袋の内側を粘膜で覆い、大量の粘液を分泌して胃が直接胃液と触れないようにしている。

ところが間脳や脳下垂体がストレッサーを感じるとこの粘液がとたんに少なくなったり、胃液の方が多くなったりしてバランスが崩れ始める。こうなると胃は自らを消化することになり、やがて胃に穴が開いてしまう。

怒りっぽくなったり、感情の起伏が激しくなったら要注意。大衆薬には抗ストレスをうたったドリンク剤が多い。特にエレウテロコックという成分が注目されている。これはウコギ科のエゾウコギの根を乾燥させたもので諸外国のスポーツ選手が飲用したことで知られている。

他に肉体疲労によいとされる麦門冬(ばくもんとう)、鎮静作用のある当帰(とうき)、利尿作用のある茯苓(ぶくりょう)など、多種類の生薬が使われている