『第222話』 衛生害虫の被害、想定した対策を

世界の国々はより近く、より密接になりつつある。外国の建材や食料品が毎日輸入される。しかし、同時に伝染病や衛生害虫の脅威にもさらされることになる。

近畿地方で発見されたセアカゴケグモはオーストラリアに広く分布し、アラビア、ミャンマー、台湾などの熱帯から亜熱帯に生息している。黒い体色の背中に赤い帯があり、体長1センチの雌がサソリ毒に似た神経性の猛毒をもつ。攻撃性のあるクモではないので、いたずらしなければかまれることはなく、全世界での死亡例は数件しかない。国内で年間約30例あるスズメバチによるアナフィラキシーショック死の方がより注意を要する。

かまれても、チクッとした痛みがあるだけで、かまれたという感覚はない。毒はゆっくりとリンパ系に回っていく。20~30分すると刺傷部の痛みが増してくる。特徴的なのは著しい発汗があることで、これはα-ラトロトキシンなどの神経毒によるもので、神経末端のカテコールアミンを短時間のうちに放出させてしまうために起こる。筋肉で起こればけいれんを引き起こす。この毒性はクモの誤食によっても発現する。

セアカゴケグモの被害を想定して、すでにオーストラリアから抗血清が輸入され。また、全国の医療機関へは治療方法などの情報が伝達されている。

こうした熱帯から亜熱帯に生息する昆虫が日本で生き永らえる背景には地球温暖化や都市のヒートスポットが進んでいるという問題がある。検疫体制の強化も必要だが、事前に衛生害虫による被害を想定して、治療方法などの情報や抗血清を用意する必要がありそうだ