『第233話』 ビタミンA摂取、多過ぎれば問題
健康を維持するためにはビタミンを摂取することが必要だとする考え方は、ビタミン神話を生んだ。
確かに戦後の栄養不足状態は、かっけなどのさまざまなビタミン欠乏症を発症させた。現在でもダイエットなどで起こるビタミン摂取不足が心配されている。
その後、国民の栄養状態は改善され、普通の食事をしていれば十分なミネラルとビタミンが摂取できるようになった。今では、むしろ反対にビタミンの過剰摂取が起こす障害の方が心配されるようになった。
ビタミンD・E・K・A(デカ)は脂溶性のビタミンで体内に蓄積する性質があるが、これとは別にビタミンAの過剰摂取によって起こる催奇形性が問題になっている。
従前から、動物実験においてビタミンAを大量投与すると催奇形性が起こることが分かっていて、このことは使用説明書にも記載されていた。
米国で22,748人の妊婦を対象に疫学的調査が行われた。昨年11月発表されたこの結果では、補給剤から1日当たり10,000国際単位を超えるビタミンAを摂取する女性において、57人中1人の割合で母親のビタミンA多量摂取による先天性欠損を有する子供が生まれると推定している。
この結果を受けて、妊娠3カ月以内および妊娠を希望する女性へ1日当たり5,000国際単位以上の投与はしないことになった。大衆薬においても同様に注意が必要で、対象となる女性が、家族が購入したビタミン剤を服用してしまうことも考えられる。また、食品や健康食品などにも大量にビタミンAを含むものがあり、過剰摂取にならないように注意する必要がある。
一般にビタミンAの成人男子の所要量は2,100国際単位、女性では1,800国際単位だ。
β-カロチンはビタミンAの前駆物質でビタミンAが不足すると必要な量だけビタミンAに変わる。大量に摂取しても、過剰症にならないという文献があるが、詳細は分かっていない