『第235話』 副作用が原因で転倒する場合も
かつては「薬好きの日本人」と言われていた。しかし今日では、度重なる薬害の報告や薬に関心を持つ人が増えたこともあり、多量の薬を服用することに拒否反応を示す人もいる。
こうした一方で、痴ほうが進行して入院した患者をみると、病名だけで6、7種類、薬は10種類以上もあるという人も少なくない。
薬は、たとえ適応する病気が違っていても同じ副作用をもつものが多く、構造式が似ていたりすると副作用が全く同じだったりする。さまざまな病気を治すつもりで処方した薬が同じ副作用を積み重ねてしまうことがある。薬を整理して種類を減らし、服用量を少なくすれば、痴ほう症状が改善することがあるほどだ。
痴ほうは寝たきりになると進むといわれるが、それを防ぐため、高齢者には歩くことを勧めたい。その際、転倒による骨折には十分な注意が必要で、薬の副作用が原因で転倒することもある。
糖尿病の薬や降圧剤は効きめが強すぎると失神やめまいを起こす。また睡眠剤や精神安定剤は眠気やふらつきを生じる。うつ病治療の薬には、横になっているときの血圧にはなんの影響も与えず、立ち上がったとき急に血圧を低下させる(起立性低血圧)ものもあり、このとき転倒する人もいる。
高齢者は肉体の機能が衰えているだけではなく薬を分解して体から排出する機能も衰えている。そのため薬は体の中に蓄積しやすく薬が強く効いている状態となる。このことが強い副作用を招く一因にもなっている。
薬を服用して気になる症状が出たときは、遠慮せず医師に告げるべきだ。副作用を恐れて勝手に薬を中止するよりは、必ず飲まなければいけない薬や、必要に応じて使う薬の使い方を説明してもらったほうがよい。
飲んでいない薬があれば正直にそれを伝え、なぜ飲まなくなったのかも伝えてほしい。それが医師にとって重要な情報になるからだ