『第242話』 硫黄泉での療法、リウマチに有効

温泉地特有の環境は日常の忙しさや人間関係の煩わしさから解放してくれる。温泉地の多くは山あいにあるので、人間に鎮静、催眠、降圧作用をもたらすフィトンチッドと呼ばれる目に見えない揮発成分が森林から出ていて、このシャワーを浴びるのもストレス解消に大いに役立つ。

温泉地の浴場には、その温泉を構成している成分名と効能が必ず掲示されている。周辺に立ち込める温泉蒸気にも二酸化炭素、硫化水素、ラドン、ストロンチウムといった物質が含まれていて、容易に人間の皮膚や呼吸器に吸収されることによって体が温まってくる。

俗にラジウム泉といわれる温泉の主成分はこのラドンやストロンチウムだ。ラジウムなどというと何やら放射能を浴びるのではないかと心配する人もいるが、入浴後は肺から速やかに排出されるので心配はない。

温泉の効能書きにはリウマチの文字がよく見受けられる。リウマチに関する薬もいくつか開発されてきたが、治癒し得るものはまだない。リウマチ患者の多くは副腎(じん)皮質ホルモンの分泌量が少なく、薬でこのホルモンを外から補っている。このホルモンには炎症を抑える働きがあり、結果的に鎮痛効果をもたらす。

本県の玉川温泉や群馬県の草津温泉に代表される高温で強酸性の温泉では、β-エンドルフィンの血中濃度が上がるという報告がある。β-エンドルフィンは人間の体内にある物質で、麻薬と似たような働きをする。リウマチに最も適した泉質は副腎皮質ホルモンの分泌を高める硫黄泉だといわれる。ほかの泉質でもリウマチ泉と名付けられている所もあり、経験上、効果が大きいと思われる。いずれにしろ温泉に入って血行が良くなると関節や筋肉のこわばりが取れ、痛みも和らぐ。

温泉療法ではリウマチの症状の進行を食い止めることはできないが、生じている機能障害のリハビリには有効な手段だ