『第267話』 患者に情報提供、薬剤師の義務に

医療現場で常識のように行われていなければならないのに、法律的な根拠がなかったり、法律があるにもかかわらず全く現状が整備されていないことがある。

薬剤師がその資格の中で行うべきことは、薬事法と薬剤師法に規定されている。この法律が6月に改定され、来年4月から施行される。

化学物質を医薬品として使用するためには、さまざまな情報を付加し適正に使用していく必要があるが、法律にはこれを規定する条項がなかった。今回の改正で、調剤した薬の適正使用のために、患者さんや看護に当たっている人に必要な情報を提供することが薬剤師に義務付けられた。遅きに失した感があるが、今までは義務が課せられていなかった。

この背景には、非加熱製剤によるHIV感染問題や、ソリブジンと抗がん剤併用による死亡事故にみられるいくつもの薬を同時に用いることで起こる副作用など、医薬品の安全性を確保することが、医薬品適正使用を推進する上での最優先課題となっていることがある。

法律の改正には、医薬品情報の収集を強化する内容や、製薬企業の不良医薬品回収情報の迅速な把握なども同時に盛り込まれている。

こうした社会の要望にこたえていくため本年度から日本薬剤師会ではケット・ジ・アンサーズ(答えてもらいましょう)というキャンペーンを展開している。

今後、さらに求めていかなければならない問題に、薬局と薬剤師の質の向上がある。日々進歩する医薬品について最新の知識を習得するために卒後研修を法制化することや、薬剤師教育の年限延長と病院などにおける実務研修の導入はぜひとも必要なことだ。

医薬品に関して県民が積極的に質問することを通じて、良質な薬剤師が育成され、薬局が選択されていく時代を迎えたと言えそうだ。