『第251話』 日光への過敏症起こす薬に注意
薬には、光の当たらない所に保管しなければならないものが多数ある。光によって成分が分解し、効果がなくなるからだ。
しかし「薬を飲んだ後、直射日光に当たらないようにしてください」という注意や説明を受けたことのある人は少ないかもしれない。
かつてオーストラリアで、ヒペリクムという草を食べた羊が、鼻の頭やつめの間に火膨れを起こし、ひどい場合はその部分が溶血して死亡する、という事件が起きた。しかし、羊の毛で覆われた部分には火膨れは起きなかった。調べると、その草の色素であるヒペリジンという物質が羊の体に吸収され、直射日光によって体内で化学変化を起こし、火膨れや発赤を生じさせたことが分かった。普段、羊たちはこの草を食べないが、牧草がなくなると食べてしまうのだそうだ。
同様のことが薬でも起きる。特にテトラサイクリン系の抗生物質やニューキノロン系の抗菌剤は、このような光線過敏症を起こしやすい。尿酸値が高い人に使用するアロプリノールも光に感作を受けやすく、それが白内障の原因にもなるということが最近報告されている。
健康食品のクロレラを飲んで直射日光にさらされた人が猛烈に火膨れを起こした例もある。クロレラには胃の中でも溶けないほど硬い細胞壁があり、そのままでは中の葉緑素を利用できない。そこでアセトンで細胞壁を壊す処理を施したところ、この過程で、葉緑素が日光によって火膨れや発赤などを起こす物質に変化していたのだ。
光過敏症はだれにでも起きるわけではない。しかし、その可能性のある薬はかなり多く、前から飲んでいる人も多いはずだ。
これからの季節、体調が悪く、薬を飲んでいるにもかかわらず海に行かなければならない場合や、外での長時間の労働を余儀なくされることもある。季節的に起こる皮膚炎や光過敏症が心配な人は、遠慮なく薬局で薬を調べてもらおう