『第255話』 下剤乱用すれば便通異常起こる
女性には普段から下剤を離せない人が多い。女性特有の黄体ホルモンの分泌が、排卵期を境にして高まり、これが腸管の平滑筋を弛緩(しかん)させ、内容物を送り出す蠕動(ぜんどう)運動を鈍くさせることがその一因になっている
1日2錠ほどの下剤で効いていたのに、50~100錠も飲まなければ効き目がなくなってしまう人もいる。このように下剤の量が多くなると、腸管でけいれんが生じて十分に排便することができなくなる。それを薬の効き目が弱いと感じてさらに量を増やしてしまうケースが多い
増量すると当然、下痢便になる。下痢が続くと、腸の中は空っぽでも常にトイレに行きたいと感じるようになる。こうした下剤の乱用による便通異常は「下剤性結腸症候群」と呼ばれ、下剤からの離脱が難しくなる
トイレ環境が変わると排便できないという神経質な人や、自律神経の不安定からけいれん性便秘になる人なども単純に下剤だけでは解決しない。精神科の医師の助言を求め、便秘の背景にある精神的な原因についても話し合うことが必要だ
下痢と便秘が交互に現れる人もいる。2、3日便秘が続いて直腸に便が滞積すると、便の塊が接する大腸の粘膜に炎症が起き、一時的に下痢が1、2日間現れる。下痢の後は排せつすべき便ができていないので便秘となり、これが2、3日続く。これが繰り返されると、下剤の適切な使い方が分からなくなる
下剤を使用する前に、食生活の改善、時間的余裕のある生活を心掛けてほしい。特に運動は効果があり、歩いているだけでガスが出ることを経験した人も多いだろう。これは腸が動いている証拠だ
民間療法でおなじみのセンナの葉は、腸粘膜を刺激して腹痛を起こすため、月経時や妊娠時、授乳期には適さない
一般に同一の薬剤を長期間使用していると、慣れが生じて増量せざるを得なくなる。そのため作用機序の異なる下剤に処方が変更されることもある